日中演劇シンポジウム「笑いとしぐさ」
日中演劇シンポジウム「笑いとしぐさ」
-世界無形文化遺産の狂言と崑曲を考える- 於金剛能楽堂
崑曲『下山』呂福海 前田尚香
狂言『お茶の水』安東伸元 木田喜方 比嘉峯宰
京都府立大学文学部が主催する日中比較演劇のシンポジウム。私は京都府民の一人として、行ってきました。ただですが、申し込みが必要だったのですが、補助席も出る盛況ぶりでした。呂福海さんは玉三郎さんの『牡丹亭』にも出演されていたので日本でもおなじみになりました。
数年前のシンポジウムでは、能楽との比較だったそうですが、私は見に行っていないので、どんなものだったのかはわかりませんが、そのシンポジウムの成果をまとめた『能楽と崑曲』という本があります。
『能楽と崑曲 日本と中国の古典演劇をたのしむ』
http://www.kyuko.asia/book/b13945.html
今回は能楽ではなく、より比較がしやすい狂言と崑曲(昆曲)の「丑」(道化役)の比較だったので、おそらく前回よりも、見やすかったのではないかと思います。
こういう大学のシンポジウムはややもすると司会進行がスムーズでなかったり、演目の説明が不十分だったり、学者先生の無駄な話が多かったりするのですが、今回のシンポジウムは大震災一周忌に行われたとはいえ、初めてではないからか、進行もスムーズで、演目の説明も的確、ストレスをほとんど感じさせない見事な運営ぶりでした。
ストレスを感じさせないといえば、さすが能楽堂で聞いた笛の音は素晴らしかったです。笛の奏者がとても有名な方だそうですが、それは音色を聞いただけでわかります。最初に『牡丹亭』の一節を演奏されたのですが、それはもう素晴らしかった。周りの人達とレベルが違いすぎるのが私でもわかったので、笛だけで独奏して欲しかった。それと楽団の男性が長袍を来ていたのは、北京の南新倉の昆曲以来でした(普通は上は中国風の上着に下はスーツのズボン、という服装が多いのですが)。おそらく演奏に参加されていた赤松教授の趣味なのかもしれませんが、今回の公演用にそろえた可能性もあります。
崑曲(昆曲)の『下山』は、京劇でやっているのを来日公演で見たような記憶があります。昆曲のは動画で見た時はもっと激しい動きをしていましたが、何せ能楽堂ですから、数珠を振り回しすぎて舞台に落としてはいけません。幾分控えめな動きだったように思います。ただマイクを使わない公演というのは本当に耳に心地よいものです。前田さんという方は、日本人で何人かおられるというプロ級の崑曲愛好家の一人で、メイクが京劇のように濃かったのが印象的でした(今の中国の昆曲界は、玉三郎さんほどではありませんが、全体的に薄め)。唱やセリフは蘇州崑劇院の呂さんと比べると、やはり呂さんの南昆のように呉方言強めではなく、比較的スタンダードな話し方歌い方をされるのだなという印象を受けました。
狂言の『お茶の水』は、初めて見た演目ですが、女の人の役をしていた人の歌がもうちょっとうまかったら良かったなと思いました。
最後も、無理矢理まとめようとせずに、ほんわかとした意見交換で終わったのも、良かったと思います。こういうところは国文の雰囲気だなぁとしみじみと感じ入りました。
京都府民で良かった(^-^)
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コメント
京都大学の赤松です。わざわざご来聴いただきどうもありがとうございます。二三、補足させていただきます。まず、銭先生の演奏について、私の如き素人が隣でじゃまをしたのがお気に召さなかったのかもしれませんが、独奏でなく、合奏にしたのは、牡丹亭を少し聞いて頂こうという銭先生みずからのご意向です。また柴礼敏は昆曲の伴奏者としては中国でも知られており、蘇州昆劇院の『長生殿』録音にも参加しております。けっして素人ではありませんので、念のため。あと、服装ですが、これも銭先生が、かつて『長生殿』で使われたものを今回蘇州昆劇院から持参されたもので、別に私の趣味に合わせてわざわざみなさんに着ていただいたものとかではありません。
投稿: 赤松紀彦 | 2012年3月13日 (火) 09時43分
赤松先生:
拙ブログにお越しいただき、またわざわざコメントも残していただいて、ありがとうございました。
長袍はとてもかっこよかったと思います。昨年の池田市での公演や、より古い形にこだわった数年前の東大寺のユネスコのイベントでも見なかったので、劇団のものではないと思っていました。
昨年の池田市の公演で笛の独奏があったので、今回もあれば良かったなぁと思いました。どの楽器も少しずつ演奏してみてから合奏すれば、私のような古典芸能好きな府民には、よりわかりやすかったかもしれません。
投稿: 紅娘 | 2012年3月13日 (火) 22時55分