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2013年6月11日 (火)

京劇三国志「趙雲と関羽」大阪公演 感想1

京劇三国志「趙雲と関羽」

 2013年6月8日土曜日 夕方4時の部
 楽戯舎の京劇公演は大阪が最後になるので、私の感想を参考にして見に行こうと思っても、もう公演は終わっている、という状態になり、申し訳なく思います。

 「趙雲と関羽」という題名は馴染みがありませんが、『長坂坡』『漢津口』と言えば、あらすじは見えてきます。劉備軍が曹操軍に追われて、劉備の二人の夫人と劉備の息子阿斗が劉備からはぐれ、趙雲が必死の捜索で甘夫人は助けるも、傷を負った糜夫人は身を投げ、阿斗のみを助け出し、なおも追ってくる曹操軍に対して、夏口から関羽がやってきて撃退し、劉備達は夏口に入る、というところで幕、赤壁の戦いの前段階となる物語を描きます。
  『長坂坡』『漢津口』と続けて上演される場合の見所は、邦題にもなっているように主役の武生が趙雲と関羽の二役を演じ分けることで、特に主役としての関羽は、京劇俳優として相当の地位にいないと演じられない役という印象があります。
『長坂坡』最大の見せ場は、糜夫人が井戸に身を投げる場面です。通常は、趙雲が引き留めようとするが、間に合わないという情景を、趙雲が糜夫人の黄色い上着を 一瞬で引っ張り取り、糜夫人は井戸に見立てた椅子(あるいは数段の台)に昇って下りて、舞台袖に引っ込むという形で表現します。あっという間に終わるもので、よく見ていないと気がつかないものですが、前もって知識があると、逃さずに見られます。非常に鮮やかな場面です。糜夫人は後ろに長い髪をつけているのですが、それをものともせずに、一瞬で鮮やかに黄色い上着だけを取るので、そこには、いろいろ技が凝縮されているのだと思います。


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(2012年2月 北京での北京京劇院の公演『長坂坡』 王雪飛の趙雲 彼は北京京劇院の武生では2、3番手ですが、1番手の俳優よりも良かったです)

 それで今回の来日公演ですが、この二つの見所のうち、一つはとても良かったと思います。趙永偉は『長坂坡』を得意とする武生ですが、私はこれまで彼が『漢津口』をつけてやった公演の情報を知らず、他の役でも関羽をやっていなかったように思うので、今回大変楽しみにしていました。趙雲が良いのは言うまでもありません。この数年若手の武生の舞台で、足が100度ぐらいまでしか上がっていないのがあって、随分がっかりしたものですが、趙永偉はさすが毎回120度ぐらいまであげていました。
 趙雲などを演じる「大武生」と呼ばれる武生の立ち回りは、孫悟空の立ち回りとは全く違って、舞踊的な大きさ、美しさがあるのですが、趙永偉はそうした立ち回りの時に、意識的に「ため」ていたように思います。私が見たのは全公演の最終公演だったのでお疲れだったのかもしれません。槍さばきなどは、昔に比べると、ちょっと見劣りした部分もありましたが、そこはこうした「ためた」演技で補っていたように思います。ためるのもある意味で槍さばきの素早さよりも難易度が高いと思うのですが、毎回の動作に惜しげもなく全力で取り組んでいるのだということが見て取れました。ただためていた分、趙雲の若さは幾分割り引かれたかもしれません。
圧巻は最後の関羽の場面。趙雲役者のイメージの強かった趙永偉の関羽を当初あまり想像できなかったのですが、立派でした。昔よりも貫禄がついたことが関羽を演じる上ではプラスに作用したのでしょう。私が好きな、目を細めるタイプの演じ方で、きれいでした。今の趙永偉の立場を考えると、今後この演目を再演する可能性は極めて低いと思われるだけに、これが見れただけでも、見に来た甲斐があったというものです。欲を言えば馬丁の立ち回りが省略されていたように見えたので、そこは省略せずに通常の公演のバージョンでやって欲しかったです。若手の武丑の良い俳優さんが来ていたのですし、日本の観客は特にそういうのが好きですから。

 残念だったのが二つ目の見所。今回の公演で不思議に思ったのが、先程『長坂坡』最大の見せ場と書いた、糜夫人が井戸に身を投げる場面が、通常の演じ方と違って、井戸に見立てた椅子の上で一度止まってから、椅子を降りて舞台袖に退場するという形だったことで、本当にがっかりしました。私が見た大阪公演だけでなく、東京で李海燕が糜夫人をやっていた時も同じように演じていたそうですので、このイレギュラーな演じ方は今回の公演のための演出かと想像されます。しかしいったん止まるので、もちろん上着はきれいには脱げず、髪を前に持ってきてから脱ぐ準備をして、よっこいしょという形で脱ぐ、という無様なことをやっていました。どうしてこのような形にしたのでしょうか。趙雲役者の趙永偉が上着を引き抜けないはずはないので、敢えてそうしたのでしょうが、最初は失敗したのかと思いました。とても興ざめしました。

(2に続く)

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