3月は中国では「両会」という、日本で言う国会の開催時期にあたります。
日本の国会と異なり、中国の「両会」では、たとえば、伝統文化界からは、能楽界、歌舞伎界、文楽界、日本舞踊界など各界の代表が、日本で言う参議院のような「政務委員」になって、伝統文化に関する政策について議論をして決めていく、という形になっているようです。
著名な京劇俳優はこの「政務委員」になっている人が多く、以前は3月は京劇界は若手の公演ばかりで、著名な俳優の公演はかかりませんでした。ところが昨年あたりから、著名な俳優も3月の会期中でも公演をしようという流れになりました。トップが変わった国家京劇院だけでなく、北京京劇院も追従しているようにみえるので、中央の意向だと思われます。
それで張建国さんの公演も昨年から、3月にもかかるようになりました。今年の三月は張建国さんの十八番の一つ「范進中挙」がかかったのですが、その公演日3月12日に、ネット上でこのようなニュースが出ました。
两会一委员大会堂栏杆上压腿(腾讯新闻)
http://view.inews.qq.com/a/NEW2015031205509100
〔上の記事の最初の部分を切り取ったもの〕
両会の会期中は、中国全土から北京にやってくる委員のエピソードを集めた記事が新聞やメディアを賑わすことになっていて、この記事は、会議の休憩時間にある委員が手摺りに足を伸ばしながら携帯をいじっている、というものでした。ネットのコメント欄は、非難するコメントが多数でした。
ところが、この足を伸ばしてストレッチをしている委員は張建国さんなのです。
私も、この後ろ姿は張建国さんだと思ったのですが、何せ後ろ姿なので確証は持てませんでした。その日の晩に親浪の微博(微博は日本のメディアでは中国版ツイッターと紹介されることが多いですが、実際はフェイスブックの機能に似ています)で、張建国さんご自身がこの写真はご自身のものであることをお認めになり、ストレッチをしないと舞台に上がれないからと、コメントされました。
この行為に対して、さまざまな意見があると思います。私個人の考えとしては、たとえ見た目には多少行儀が悪いことではありますが、夜の公演に備えて、休み時間にストレッチを欠かさない張建国さんの姿勢は、俳優として当然の心構えであり、京劇界において確固たる地位を築いておられる張建国さんが、普通の公演に対しても妥協をしない、気を抜かない姿勢に、心から敬服をしました。微博にも、この委員は公演のためにストレッチをしていることを広めましょうというコメントをしました。
次の日13日に、鳳凰網という、騰訊とは別のメディアが、微博の記事をもとに以下のような記事を挙げました。
京剧艺术家大会堂栏杆压腿抢镜 回应:舒展筋骨
http://ent.ifeng.com/a/20150313/42338052_0.shtml?zargmiotmwsrgdez#p=1
写真は、騰訊のものと同じで、最後の12日夜の公演のものだけ、微博のネットユーザーのものを使っています。
〔写真は4枚目です〕
12日の昼に写真を撮られたこと、建国さんがストレッチをしていたことをご本人もお認めになったこと、そして12日の晩の公演の舞台写真を挙げて、ネットのコメントには、こういう行為は公共物を破損する行為だという人がいる一方で、公演のために準備を欠かさないことに対して、支持するべきだという意見もあると報道しています。テレビでも同じ内容のことを紹介していたようです。
しかし、毎日何十人が一斉に足を上げてストレッチすれば、手摺りもそのうち壊れるかもしれませんが、一人が少しストレッチしたぐらいで、中国の会議場の手摺りは壊れる心配をするほど壊れやすいのでしょうか…
私はますます張建国さんのファンになりました。
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